로그인———翌日・アルバイトへ行く道中。
あのあと。神器の欠片は問題なく皇の所有物となった。だけど、双鹿にねだられて2回戦目が始まったのは……まあ、別の話。
そして、皇はゲーム内で双鹿にある提案をしたのだった。
〝神器の欠片は貰うけど、ワールドは今まで通り双鹿が好きにしてくれて構わない〟
そんな提案。
〝まあ、別に私も統治者らしい振る舞いはしてないのだけれど……了解したわ〟
そんな了承。そうして、神器の欠片は皇が、ワールドは双鹿が持つこととなった。
とにかく、1個。でも、集めなければいけない、ということは神器の欠片は1個ではないのだろう。そして、多分、AWMの他の統治者たちが持っている。
せめて、女であることを皇は祈りながら自転車を漕いだ。
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あの日の作戦会議の結果。女性陣は現実世界でオルドデウス社の告発の準備をきっちり進め、皇、クロム、薊の野郎3人で秋峰との話し合いに臨むということが決定された。 それまでの日数は、悔いの残らない様過ごすことを言い渡されて。もちろん、皇たちに負ける気なんてものは一切ないが。--------------------------------------------------------------- ———翌日・朝。薊と皇のアパート。 その日は、珍しく朝食を作る場に皇も立っていた。そう言う気分だったのだ。「てめぇが生地を作ったパンケーキぜってェ膨らまねェからな」「……みたいっすね……」 2口コンロに2本のフライパンを乗せて。じっくりフライパンを温めた後、バターを投入して、溶かしてからパンケーキの生地を落とした。皇の混ぜた生地と薊の混ぜた生地。それをじっくり見ていると、薊の宣言通り……皇のパンケーキはぺちゃんこだった。「だァ———ッ、言っただろ!?混ぜすぎだって!」「いや、だってきちんと混ぜた方がいいだろ!?」「パンケーキじゃなかったらなァ!?!?」 そう言いあいをしつつも、空気は悪くない。皇も薊もこの時間を楽しんでいた。お互いに、馬鹿みたいに笑えるこの時間を。--------------------------------------------------------------- 結局、食卓にはぺちゃんこのパンケーキと程よく膨らんだパンケーキ、スクランブルエッグにウインナーが並んだ。それらを優雅に食べながら会話をする。「てめぇは金輪際製菓はやるな。向いてねェ」「ういっす……」 そう言いつつ、薊は皇が焼いた方のパンケーキをメインに食い進める。こいつ、本当いいやつ。 そんなことを思っていると
紅華の切実な頼み。それに対して、皇は。「頼まれなくてもやりますよ。俺は、聖ユリア王国を、国王を、ラフィを助けたいんですから」 そんな皇の即答に紅華はゆっくり顔をあげて、薄い笑みを浮かべた。「……ありがとう」「……まあ、とりあえず俺だけは確定で。みんなはどうする?」 そんな皇の問いに、薊が口を開いた。「おいおい、此処まで来て〝じゃ!解散!〟は冷てェぞ?なあ?」 そんな薊の文句に、女性陣も「うんうん」と頷いて。「頼もしいな、本当」 そう皇の頬がついつい緩んだ。この全員で、生きて世界を救う、そんな誓いを1人立てながら、皇が紅華を見れば紅華が片手を挙げる。「作戦……と言えるほど緻密なものではないのだけれど、私から行動を提案させてもらってもいい?」「あ、それは全然。むしろ、本職(?)のご意見はありがたいです」 本職というのだろうか。公安の組織体系が微妙に分からないので単語の後にハテナまでついてしまう始末だ。「私は実行部隊だから本職ではないけれどね。提案は単純、ヴィクトくんが秋峰のゲーム内の体を押さえるのと同時に、現実世界で私が秋峰の体を押さえる。こうすれば、ヴィクトくんに追いつめられて現実に帰ってきてもなにもできない、と私は予測しているわ」 単純だが、それは大事な気がする。仮にゲーム内で圧倒したとしても、ログアウトして仕切りなおされたらたまったものではない。そういうことを防ぐためにも、両方の体を押さえる必要は出てくるだろう。 だが、皇が頷こうとした瞬間だった。発言権を求めるように片手を挙げたのは意外にもクロムだった。 全員の視線がクロムに向けば、クロムは何度か咳払いをしてから口を開いた。「紅華の言うことは正しい。だが、7つの神器を秋峰が手にした時点で恐らく世界は秋峰の望むものに改変されることになる……つまり、こちらでどれだけ体を押さえても無意味だ」 その言葉に沈黙が落ちる。だ
それはその日の朝、皇のリムレットに届いていた。受信時間は、午前05時頃。 ……と言っても、正確には皇のリムレットに届いていたわけではない。デメテールからメールが転送されていたのだ。つまりは、メールの差出人は皇ではなく、ヴィクトに用がある。 そして、そのメールの差出人は……七界院《しちかいいん》 秋峰《あきみね》、オルドデウス社の社長の名前だった。 メールを開けば、なんか季節の挨拶とかこまごま礼儀正しく書いてあったが……中身を要約するとこんな感じだった。〝君の集めてきた6つの神器の欠片を12億で買い取らせてほしい。その為の要望のすり合わせをしたいので、AWM内オルドデウス社専用ワールドで話し合いをしたい〟 とのこと。指定された日付は5日後。 そして、同時に皇は思った。(多分、此処を逃したら……オルドデウス社の社長、いや、ゲームマスターに接触することなんてできない) 薊には即座に報告だけした。でも、もう止めなかった。 それは皇の覚悟を受け止めたから。--------------------------------------------------------------- ———翌日・嬉嬉軒。 翌日、その日は嬉嬉軒が定休日だった。なので、その場を借りた。そこにはいつも通りのメンバー……に、加えて。紅華とクロムも居た。皇が呼び出したのだ。 各々自由に座りながら、皇の話を聞いてくれる構えだ。そして、皇は切り出した。七界院 秋峰から届いたメールの話を。 一番最初に声をあげたのは紅華だった。「……罠ね。オルドデウス社の自社ワールドなんてなにが仕込まれているか分からない」 紅華の鋭い眼光が皇を見る。言わんとしていることは分かる。クロムを操っていた会社だ。どんな非人道的な行為に出てくるか分かっ
薊の退院は思ったよりすんなりと通った。3日間ぐらいは検査漬けだったようだが、目覚めて半日後には「腹減った」と言っていたらしく、目覚めて翌日の夕飯からは普通に固形食を食べていたとか何とか。 検査をしても異常は見つからず、そんな健康優良児を病院も長く置いておく気はなかったのだろう。目覚めて1週間ぐらいで解放された。 これは薊から後から聞いた話だが、紅華も薊の元を訪れたらしい。薊曰く、〝なんかこまごまと聞かれたぜ?〟とのこと。 まあ、そんなこんなのようやく帰ってきた日常だった。---------------------------------------------------------------「クソ……なんで、俺が作るのよりふわふわして美味いんだ……」 皇は薊の作ったふわじゅわのだし巻き卵に舌鼓を打っていた。口に乗せればふわっとし、噛めばお出汁がじゅわじゅわ出てくる。薊の残したレシピに従って皇も作ったがこうはならなかった。一体、何が違うんだと首をかしげてしまう。「はっ、それをレシピ見ただけでマスターされたら俺みたいな料理人はいらねェんだよ」 そう、みそ汁を啜る薊が笑う。それはそうなんだが、悔しいものはある。「でよォ、てめぇは今日はどんな感じだ?」「んー、今日は愛鹿のところでバイトだけだな。薊はこの時間にいるっつーことはオープンじゃない……夜勤務か?」「いや、今日は昼だけで短めだな。店長が、目覚めたばかりだからって気ィ使ってくれたんだよ」「あー、いい人だ」 そう言いながら、白飯を食べる。そして、咀嚼して飲み込んで言うのだ。「じゃあ、帰り嬉嬉軒に集合しようぜ。薊にも食べて貰いてーんだよ、姫沙羅の親父さんが作る料理。ほんと美味くて」「それは俺の料理とどっちがうめェんだよ」「妬くなよ。俺は薊と一緒に食いてえの」 そんな会話をしていれば、薊は一足先に朝食を食べ終えて、食器を下げる。「俺出るまで時間ある
そんな会話をしていると、薊の病室のドアがノックされた。薊が軽快に返事をすれば、スライドドアが開いた。そこには、愛鹿たちが立っていて。 愛鹿も姫沙羅も瑠奈も起きている薊を見て、どこかホッとした表情を浮かべて病室に入っていく。 唯一、初対面の悠理だけがドアの後ろにちょこんと隠れていた。勢いで来たのだろう。でも、初対面故にどう接したらいいか分からない。うん、可愛い。 そして、薊と女性陣が話してるのを横目に、悠理に声をかけるために席を立つ。「悠理」「兄さま……感動の再会に私水差してないでしょうか?」 そう眉を下げる悠理に皇は苦笑する。「大丈夫だよ。悠理も薊を助けたんだ。ドヤ顔して、〝貴方を助けましたけど?〟って態度で何食わぬ顔で立ってればいいんだよ」「私、そんな厚顔ではありませんよ」 でも、そんな皇との会話に踏ん切りがついたのか、悠理も病室に一歩足を踏み入れて。「お」 薊が気づく。じゃあ、あとは皇が潤滑油になるだけだ。「俺の義理の妹で、薊を助ける時死ぬほど頑張ってくれたうちの1人だ」 そう皇が言えば、悠理はぺこりと頭を下げた。「遊城……の姓は捨てたので、悠理とお呼びください。兄さまのお友達さんなんですよね?」 そんな悠理の笑みに、薊ははっと笑った。「ああ、一番の大親友の甲斐堂薊だ。こいつの妹っつーことは……俺の妹とも同義だなァ」「同義じゃねーよ、調子に乗るな」 お兄ちゃんポジションは渡しません!そんなことを思いながらツッコんだ。「いや、悠理はなんていうかみんなの妹だから……」 姫沙羅の言葉にびっくりする。え、その共通認識いつ生まれたの?「そうね、義妹さんももう遊城の姓を捨てたのなら……全員の妹と言っても過言ではないわね」 過言だよッ!「悠理、私のことは気軽にお姉さまと
アザカが目覚めて。色々を話そうとするヴィクトの頭をはたいたのは双鹿だった。「まだ安心するには早いわ」「意識がちゃんと体に帰るか確認してから喜びなさぁい。こんなこと前例がないんだから、ちゃんとログアウトできるまで気を抜けないわぁ」 そんな双鹿とリザの促しにより、とりあえず、一旦全員ログアウトすることになるのだった。--------------------------------------------------------------- ———薊と皇のアパート。「っ……!」 AWMからログアウトした皇はガバッ、とベッドの上から起き上がった。起き上がって、即座に電話をかけるためにリムレットを立ち上げようとした瞬間だった。リムレットが着信する。相手は、紅華が紹介してくれた病院。 皇は呼吸が止まりそうな思いになりながら、震える手で応答ボタンを押した。「もしもし」『皇さんの電話であっていますか?私、八東病院のものになります。緊急のご連絡です』「はい」 心臓が、口から出そうだった。この一瞬の間が何秒、何十秒にも、何百秒にも引き延ばされるような感覚。頼む、無事であってくれ。無事で。『……甲斐堂薊さんがお目覚めになりました』--------------------------------------------------------------- 気づいたら走っていた。リムレットをいつ切ったかなんて覚えていない。気づいたら鞄を持って走っていた。駅まで走って、もう終電を終えていることに気づく。 それに気づいて、皇は金額なんて気にせずにタクシーに乗り込んだ。 この時間に病院へ向かっているという事実にタクシー運転手の人もなかなか速度を出してくれていて。 皇は、タクシーの中でそわそわとしながら思い出す。女性陣に連絡していないことに。そして、リムレットでグループメッセージに『薊が